慣用句まちがい探し

慣用句(かんようく)は古くから広く使われてきた、ひとまとまりの言葉・文句で、言い回し(いいまわし)ともいいます。

通常は二語以上の言葉が結びついており、それらではしばしば字面どおりの意味とは異なる意味をなす事が多くあります。

敬語の使い方が間違っていても気付かないように、この慣用句も多くの人たちが間違いに気付かないまま、普段当たり前のように使っていることが多いのです。

例えば… 「汚名挽回」「あとで後悔する」「恐らく大丈夫です」など、どこが間違っているかわかりますか?

何気なく使っている、間違いだらけの慣用句。

ビジネスシーンでもよく使われるだけに、正しい言い回しを覚えておきたいものです。


どこが間違い?

「今度こそ、雪辱を晴らします」


TVのアナウンサーが、スポーツ中継で「今日こそ、この前の雪辱を晴らしてほしいですね」ということがあります。

「雪辱」には、恥をそそぐ、晴らすという意味が含まれています。
よって、「雪辱」と「晴らす」をつなげるのは、重複表現です。

「勝負に負けて受けた恥を、次に勝つことによってそそぐ」ことを、次の試合で「果たす」ということで、正しくは「今度こそ、雪辱を果たします」が正解です。



どこが間違い?

「ダメだと注意した矢先に、また同じ失敗を繰り返した」


「矢先」という言葉の意味は、「何かをしようとするちょうどそのとき」で、「始めようとする矢先」や「出かけようとしている矢先」というように使うのが正しい使い方。

一方、「注意した」は「してしまった=過去」であるので、過去に「矢先」という言葉を付けるのは違和感がある。
したがって、「矢先」という言葉を使うなら「ダメだと注意しようとした矢先に、失敗してしまった」などと使うのが正しい言い回しになる。


どこが間違い?

「後輩が風邪をひいて、熱にうなされているらしい…」


熱のためにウンウンうなっている状態を「熱にうなされている」と表現することがあるが、「うなされる」のは、熱ではなくて悪夢の方。
悪い夢を見て苦しげな声をあげることを「うなされる」という。

熱のためにウンウンうなっている状態は、「熱にうかされる」という言い回しが正しい。
高熱のために体がフワフワと「浮かされる」という感じを表現している。



どこが間違い?

「この企画は通らなかったが、新規巻き返しで頑張ろう」


事業などに失敗し、一から出直してやり直さなければならない時に、「新規巻き返し」という言い回しをすることがあるが、「巻き返し」は元に戻すという意味で、全てをやり直すという意味の「新規」と連ねて使うのはおかしい。

正しい言い回しは「新規蒔き直し」で、「蒔き直し」の意味は「種を蒔いたが芽が出ないので、改めて種を蒔く」ことで、「改めてやり直す」ことを意味する。
この他、「新規巻き直し」も間違い。


どこが間違い?

「森田氏が知事に選出される公算が強い」


「公算」の意味は、その事柄が起こる確率、見込みのこと。
普通、確立は「大小」で表現し、「強い、弱い」とは表現しないもの。
したがって、「公算が強い」ではなく、「公算が大きい」が正解。

しかし、最近では「公算が強い」や「〜の公算になる」という使い方が増えているため、間違いとは言えなくなってきているようだ。



どこが間違い?

交渉は、デッドロックに乗り上げてしまったようだ


会議などで話が行き詰まりを見せたときに、よく使われる表現です。

ここでの間違いの元は、「デッドロック」を「暗礁」のことと思い込んで、「暗礁に乗り上げた」という意味で使ってしまっていることです。

デッドロックの「ロック」は「錠」のことで、「開かない錠」がデッドロックの意味です。

つまり、「錠が開かない」から「前に進めない」ということなので、「乗り上げる」のではなく、「開かない扉」に「突き当たる」というのが正しい意味です。

よって、正しい使い方は「交渉は、デッドロックに突き当たってしまったようだ」になります。



どこが間違い?

部下のミス続きに、私は怒り心頭に達した


怒りが爆発して、血が頭の上までのぼりつめたというようなイメージがありますが、「心頭」とは頭のてっぺんではありません。

「心頭」は「心の中」や「念頭(胸のうち)」のことで、怒りが発生するところです。

怒りが心の中で発生する=「発する」ので、「達する」のではありません。

よって正しい使い方は「部下のミス続きに、私は怒り心頭に発した」になります。



どこが間違い?

すぐに引き止めないと、あとで後悔するぞ


間違ってないようで、間違っている言い回し。
この表現が間違っていると気付く人は、あまりいないのではないでしょうか?
そもそも「後悔」は「あとで」するものなので、この言い回しでは同じ言い方を繰り返す二重表現になっています。

正しい使い方としては、「あとで」を取って「すぐに引き止めないと、後悔するぞ」
と言うべきです。
しかし、「あとで」を付けることで「後悔する」と言う意味が強調され、言葉のテンポもよくなるので、最近では必ずしも間違いだとは言えなくなりつつあります。

このような二重表現で当たり前に使われている言い回しに「まず最初に」や「長い間ご無沙汰して」などがあります。


どこが間違い?

恐らく大丈夫です


これもよく使われていませんか?
「恐らく」という言葉には、不安や心配などの否定的な意味が含まれています。
ですので、「恐らく間に合うでしょう」「恐らく上手くいくよ」など、肯定的な言葉を続けるのはおかしいのです。

「恐らく」には「恐らく通れないだろう」「恐らく間に合わないだろう」のように否定的な事柄のみに使うべきです。

ちなみに肯定的にも否定的にも使える言葉として、「たぶん」や「きっと」などがあります。



どこが間違い?

今度の試験に照準を当てて、勉強します


スポーツ選手などのインタビューで「次の試合に照準を当てて、練習したいと思います」という言い方を聞いたことはありませんか?

「照準」とは弾丸が目標に命中するように「照準器」を合わせるという意味。
目標とする事柄に狙いを定めるという、広い意味で用いられるようになったと思われます。

「照準」は「合わせる」もので、「当てる」のは「弾丸」です。
したがって、正しい使い方は「今度の試験に照準を合わせて、勉強します」です。


どこが間違い?

それは、なかなか的を得た意見だ


この言い回し、よく耳にしませんか?
「的確に狙いをとらえた意見」という意味で使われていますが、この表現は誤りです。

言葉を分解すると、「的」は弓矢の標的のことで、「得る」物ではなくて「射る」ものです。
したがって、正しくは「それは、なかなか的を射た意見だ」となります。

平成15年度の「国語に関する世論調査」(文化庁調べ)で「的を射る」を正しいと選んだ人は、38.8%、「的を得る」を正しいと選んだ人は、54.3%で、間違い表現を正しいと思い込んでいる人がかなり多いことがわかりました。

「得る」を使った言い回しとしては、「当を得る」という言い方があります。
これは妥当、正当などの「要点をとらえた」という意味です。
「当を得る」と「的を射る」を混同しないように使いましょう。



どこが間違い?

「今度こそ勝って、汚名を挽回します」


この言い回し、どこがおかしいでしょうか?
さらっと聞き流すと、まちがいに気付きにくいですね。

「挽回」とは、「取り戻す」という意味です。したがって、「汚名を挽回」するということは、「汚名を取り戻す」ということになってしまいます。
汚名を取り戻しては、汚名の上塗りになってしまいますね。

「汚名」は「返上」するもので、「挽回」するのは「名誉」です。
したがって、正しい使い方は「汚名を返上する」「名誉を挽回する」です。


どこが間違い?

「急に転勤だなんて、思いもつかない展開だ」


どこがおかしいか、思いつきますか?
そもそも「思いも」のあとに「つかない」という言葉は続きません。
よって、「思いつかない」という言い方はあっても「思いつかない」という言い方はないのです。
したがって、この場合の正しい使い方は「思いも寄らない展開だ」です。

「思いつかない」は「考えが浮かばない」という意味では使われます。
まちがった使い方の例として、「思いもつかない発想をする」や「思いもつかない広さだ」などの表現があります。
「思いつかない」と「思いも寄らない」を混同しないように使いたいものです。


◎使える!フレーズ集◎
【常套句】 じょうとうく
同じような場面で決まって用いられる文句。
決まり文句。
常套語とも言う。

言いにくいときの常套句≫

断りたい時の常套句≫


【社交辞令】 しゃこうじれい
世間づきあいを円滑にするために用いる、儀礼的なほめ言葉やあいさつ。
内実の伴わない空々しい言葉。
外交辞令とも言う。
「どうせ、社交辞令でしょ!」などと、悪く捉えることも多いが、ビジネスにおいては重要な要素のひとつでもある。

会った時には…≫

別れ際には…≫


【慣用句】  かんようく
二語以上の単語が結合して、それ全体である特定の意味を表すもの。
「油を売る」「あごを出す」の類。
イディオム。慣用語。

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